留学者インタビュー

  • 池田正俊
  • 内村彩加
  • 佐藤史哉・奥富雅俊
  • 島岡佑典

アメリカ合衆国フロリダ。議論することの大切さを知った旅。 東北大学医学部医学科4年生 佐藤史哉・奥富雅俊

まず、佐藤さんの研究テーマについて伺いたいと思います。
どんな研究をされているのか、高校生の皆さんにも伝わるよう、分かりやすく簡潔にお教えください。

佐藤:高校生にもってかなりハードル高いですね。
僕は「活性イオウ分子種」というものについて研究してきました。
活性イオウ分子種というのは、システインとかグルタチオンっていうアミノ酸にイオウ分子がいっぱいくっついた物質と思ってください。抗酸化制御作用----とかいろいろ役に立つ機能を持っているらしいんですが、まだわからないことが多すぎるので研究中です。

まだ未知の分野ですよね。

佐藤:そうですね。あまりにニッチ過ぎて、どうも競争相手がいないらしいです。
だから学会とかで発表しても、みんな「・・・」ってなるそうです。誰も質問に来ない、みたいな。まだまだこれからの分野なので、誰も質問できないんでしょうね。
いま研究していることも、「面白いね」って言ってもらえるか「そんなワケないだろ」って怒られるかのどっちからしいです。

ニッチ過ぎて……。それもすごいですね。
佐藤さんはどうしてソコに興味を持ったんですか?

佐藤:僕ですか? 僕は研究室を決めるときは、まず留学できるってとこで選んで、いまのところはやっぱり「ハーバードに行ける」ってコトだったんで……。

ハーバードに行きたかった? 内容ではなく。

佐藤:はい。あ……研究内容もすごく斬新で……。

ハーバード、に行きたかった?

佐藤:……はい。
あ、あと、友達と一緒に行けたっていうのもあったので選びました。

友達と一緒に行ったんですか?

佐藤:そうなんですよ。もうむちゃくちゃ仲良い友人と行けたので本当に良かったです。
期間は約2ヵ月間。本当に楽しかったです。

元々留学には行きたいと思っていらっしゃったんですか?

佐藤:はい。先輩方から話を聞いて僕も行きたいなって思ってました。
入学前はこういう制度があるなんて、正直知りませんでした。
この辺りは高校生の皆さんにも、もっと知ってもらいたいなって思います。
僕はずっと英語圏に行ってみたいと思っていました。英語の勉強にもなるかなと思ったので。やっぱりコミュニケーションを取ろうと思ったら英語が必須だと思うんです。

そのアメリカにいって世界的にニッチな研究をしてきたわけですね。
さっき話していた“友達”もニッチなところに行ったんですか?

佐藤:はい。本当にもうまったく同じ研究室です。やることも二人で一つ、みたいな。ずっと二人で一人分働く、みたいな感じでしたね。
周りの仲間たちにも「仲悪くならなくて本当に良かったね」って言われます。さすがに2ヵ月も一緒にいるわけですからね。嫌気さすか、もっと仲良くなるかのどっちかですね。
でもまあ元々仲いいひとだったんで、本当によかったです。

では研究分野について伺います。先ほどまだ未開拓な分野だとおっしゃっていた「活性イオウ分子種」ですが、ハーバードではもう研究されているんですね。

佐藤:いいえ。そういうわけじゃないんです。僕たちがお世話になったハーバードのラボでは「熱傷とミトコンドリア」の研究をしていました。
僕たちが選択した東北大学の研究室で確立した技術で、向こうの研究室のテーマになっているタンパク質を検出する、というプロジェクトが動いていたんですが、僕たちはそこに加えていただいた形です。
一応僕たちもミトコンドリアの研究もしていましたし。
僕たちの研究室は教授をはじめほぼ全員が参加しました。
最初に顔合わせのようなミーティングを行ったときは、もちろん教授も含めうちの研究室みんなが参加しました。
そこで教授二人だけがものすごく盛り上がってるんですよ。どうやらものすごく面白いことを話しているようなんですが、あまりにレベルが違いすぎて僕たちはまったく意味がわかりませんでした。本当に何言ってるか全ッ然わかりませんでした。
でも、きっとあれが「ホンモノ」の人たちの姿なんだなと。

国を超えて、言葉を超えて、異なる研究室がひとつのテーマに取り組む。
実際にその現場に立ってみていかがでしたか?

佐藤:今回は研究室の先生方と一緒に行ったんですが、国や言葉を超えた「研究者同士のホンモノのコラボレーション」を見ることができたのは貴重な体験だったと思っています。
それから、正直レベルが高いということを実感しました。僕たちにも一応仕事があったんですが、手出しができないというか。本当に簡単なものしか手伝うことができませんでした。やっぱりまだまだ勉強も経験も足りません。
でも向こうの先生も日本人の方だったので、いろんな話を聞くことができました。

世界のレベルを目の当たりにしたというのはものすごい体験でしたね。
では、向こうでの日常生活について伺います。
定番の質問ですが、ご自身の語学力は通用しましたか?

佐藤:行ってから伸びましたねやっぱり。
僕たちはホームステイしていたんですけど、ホストファミリーにすごく良くしていただいて。ホストファミリーに同年代の方が二人いてくれたので、イロイロと教えてくれて。本当に良かったです。

そのホストファミリーのところに友達と二人でお世話になっていたんですか?

佐藤:いえ、家は違いました。でも本当に良いホストファミリーで良かったなと思います。
このホストファミリーも自分たちで選んだんですよ。

ホストファミリーも自分たちで?

佐藤:はい。他の留学生も期間と費用などから滞在期間中どこに宿を取るか決めると思うんですけど、自分たちはホームステイを選んで、海外の紹介サイトでホストファミリーを探しました。
そのサイトに自分たちのプロフィールとか滞在理由なんかを送ると、向こうのエージェントが候補を選んで送ってくれるんですよ。候補はそんなに多くなくて、ほぼ選択肢がないくらいですけど。
このサイトは一緒に行った友達が、知り合いの研修医の方がハーバードにいたらしくて、その方が使ったサイトらしいです。もちろん完全に英語のサイトなんですけど。

ホームステイ先を調べたサイト

『At Home in Boston - Your homestay accommodation source』

そうすると、そこから自分たちで全部調査して、交渉して、ということですね?

佐藤:はい。向こうとやり取りして。

それはいい経験をしましたね!

佐藤:そうなんですよ! 最初は英語でのメールの書き方もまったく分からなくて。
あとからめっちゃ失礼なこと書いてたことが分かったりとか。

あるあるですね。それでトラブルなどはなく?

佐藤:向こうも慣れている方だったので別になんともなかったですけど、ちょっと焦りました。これ、研究分野でもそうなんですけど、僕たちの分野はまだこれからなので、知らない言葉とか新しい言葉ばかりなんです。それでも先生方にたくさん教えていただいて。ほんと勉強になりました。
日常会話はとりあえず普通に話せる位にはなったんで、「伸びた」と思いたいですね。
言葉といえば、面白かったのが教授たちです。もちろん違う研究をしている者同士でコミュニケーションできるのも凄いんですが、それよりも何というか……ホントに教授って頭良いんですよ。頭の回転が違うって思いました。いやほんとに。「ソコとソコを関連付けるの!?」とか。何かひとつ話しを聞くと、次をまったく違うところから引っ張り出してくるんですよ。その速度がまた凄いんです。止まらない。会話を重ねるんじゃなくて、飛躍。それでもお互いがちゃんと理解できてるんですよ。

良い物を見ましたね。

佐藤:カッコ良かったです。本当に、最先端のところを見せていただいたので。
でも自分の無力感を結構感じました。
2か月の留学を終えて帰ってきたあとは、やっぱり英語をちゃんとやろうって思いました。世界で研究されている方々は、やっぱり英語を使いますよね。コミュニケーションってやっぱり重要で、自分たちの考え方を伝えられなければやっぱり不利ですし。まずは語学力が大事なんだって思いました。
それから、最先端の研究の世界を見せていただいて、その現場と今の自分との距離をものすごく感じました。今はまだ遠いですけど、何年かしたらあの場所に行けるように努力したいなって思いました。
僕も友達も、今年は留学に行く人数が少なかったので行けたのかなというところもあるんです。他のひとに比べて成績も良くないですし、英語力もありませんでしたし。先生方にも「お前たちが優秀だから奨学金がもらえたんじゃないんだぞ」って何度もクギを刺されました。
でも、だからこそ行ってよかったなっていう話にしました。二人で。
先生方の言葉は「しっかりやれ」って意味だったと思うんです。実際ものすごくモチベーションにつながりましたし。
そこまでしていただいていて何もしなかったら、何も変わらないですから。

「二人で」という言葉にとても強い意思を感じます。
それにしても、佐藤さんにとってその「友達」という方がとても大きな存在だったと思います。
お名前は?

佐藤:奥富雅俊といいます。いま電話してみましょうか。
実は今日は一人かぁって少し残念だったんです。

お願いします!

<電話中>
本来、登場予定ではなかった奥富さん。
部活の先輩へのご挨拶のため、たまたまスーツに着替えているところだったため、急きょお時間をいただきインタビューに参加していただきました。

奥富:はじめまして。医学部医学科四年、奥富雅俊です。ええと、何が起こってるんですか?

急に申し訳ありません。
留学について佐藤さんにお話を伺っていたんですが、佐藤さんが「何だかよく分からないんですけど最先端を見てきました!」と言うわけですよ。で、よくよく聞いてみたら「仲の良い友達と二人で行ったんで、めっちゃ楽しかったです」「二人で一つのことやって来ました」とか、本当にすごく良いことを話してくれたんですが、肝心の「友達」がいらっしゃらなかったので巻き込ませていただきました。

佐藤:実は準備してたんでしょ? スーツまで着ちゃって。

奥富:違うって。本当に先輩に挨拶に行くところだったんだよ。

お二人はずっと一緒何ですか?

奥富:ずっと一緒ですね。

いわゆるツレ。

二人:ツレです。

奥富:ニコイチってやつですね。本当に大概一緒にいますね。勢い余って留学まで一緒に行っちゃって。

これはもう一生の友達ですね。

奥富:それはもう、そうですね。切っても切れないと思います。

二人で行ってみて、どうでしたか?

奥富:最先端?

佐藤:それもう言ったから。

奥富:ええ……そうですねぇ。何もできない状況でアメリカという新しい環境や社会に飲まれたのが良かったと思います。
実はですね、結構軽い気持ちで行っちゃったんですよ。
でも、ハーバードの大学院には様々な国から様々な留学生が来ていて、みんなメラメラ燃えているんですよ。同じハーバードに行った島岡くんのところなんかはもう結構すごかったらしいんですけど。でも我々はフワッとしてて。

「え、僕たちこんな感じでいいの?」といった感じですか?

奥富:そんな感じですね。

佐藤:あー、それはホントに。それですね。

奥富:本当に刺激だらけでしたね。
他にも日本人の先生方がいらっしゃったので少し話したんですが、「他の学生たちは本当に血眼になってココに来ているんだけど、君たち簡単に来られてよかったね」といったことを聞いて……。世界のトップレベルが集まる所だと、学生でもこんなに差が出るものなのかと。本当に衝撃でした。

一人だったら大変でしたね……。

奥富:たぶんメンタル崩壊です。

佐藤:やられてたと思います。僕も一人じゃ無理でした。

奥富:自分たちの弱いところをお互いに知っているから、きっと良いバランスが保てたんですよね。

具体的にどんなところで支えあってきましたか?

奥富:基本的に二人で同じ実験をしてきたんですけど、大体どっちかが間違えてるんですよ。
だから常に二人で騒ぎながらやってました。そんなかんじでしたから、「一人だったら多分これできてなかったな」っていうケースがとても多かったですね。

厳しい環境だと二人で言い合えるっていうのはいいですね。
あちらでは二人で遊びにいったりもしたんですか?

奥富:しました。土日はやすみでしたから。

彼はホストファミリーに同年代の方がいらっしゃってイロイロ楽しんできたっていうんですが、奥富さんはいかがでしたか?

奥富:僕は日本語と英語の語学交換っていうんでしょうか。そういうコミュニティに顔を出して遊んだりしていました。せっかく向こうにいけたので、現地で英語を勉強しようと思いました。

言葉が通じないというのは壁になりがちですが、そういった気持はありませんでしたか?

奥富:やっぱり緊張はしますけど、何もしないと2か月があっという間におわっちゃいますから。

研究についてはいかがでしたか?

奥富:圧倒されました。どうしようかと。

佐藤:向こうにいるうちから結構将来についての話とかしてましたね。

奥富:「研究医」ってこういう世界か、とか。

それは、自分たちが考えていた「研究医」よりもハードそうだったということですか?
それとも自分たちにあってるんじゃないかということ?

奥富:僕は……あってないかもしれない……ですね。

佐藤:あってない。

奥富:あ、でも実験の最中に面白みを見いだせたりして。面白いことは面白かったです。

佐藤:精製がうまくいったりするとテンション上がるんですよ。「成功したあ!」って感じのゲーム的楽しみというか。

奥富:でも、自分たちの進路について考えてしまったり。
向こうで臨床の研究をやっている方々のお話を聞くことができたりもしましたので。
あとは「アメリカで働く」ってのはどうなんだとか。

現地を垣間見た人間として、いかがですか?
アメリカで働いてみたいですか?

奥富:んー……2年くらいだったらいいかなって。

佐藤:そうですね。2年くらいだったらいいんですよ。これ二人で同じ答えなんですけど。

奥富:そう。一生となるとちょっと違うんですよ。

二人:永住はしたくない!

奥富:でも良いところはものすごく良いし、本当に勉強になることが多かったと思います。何らかの仕事で、期間を決めて研究に行けるのであれば、また大きな収穫があるんじゃないかと思います。

二人で留学して、二人で将来への展望が持てたというのは素晴らしい成果ですね。

奥富:はい。研究については自分たちの力不足を大きく感じました。でも、それは自分たちの努力でどうにかなるかもしれないし、それ以前にまったく別の方向に進んでいくのかもしれません。
そういう「自分の可能性」についてそれぞれ考える機会を持てたのは良かったと思います。

佐藤:そのきっかけとなった時間を共有できたことと、将来を考えている瞬間にお互いに近くにいられたことは、大きな意味があるんだと思います。
この体験が僕らにとって一生の財産になったのは間違いないと思います。

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